武藤洋二著 天職の運命〜スターリンの夜を生きた芸術家たち〜
- 鈴木厚本人
- 2021年10月19日
- 読了時間: 2分
2018年1月24日 水曜日 ブログ銀窯日記に投稿
武藤洋二著 天職の運命〜スターリンの夜を生きた芸術家たち〜 みすず書房
図書館で手に取ったのはTwitterで知ってファンになった20世紀前半のロシアソ連の前衛画家フィローノフが表紙になっていたからだが,その章だけのつもりがあまりの面白さに引き込まれ全編一気によんでしまった。
歴史書につきものの大量の註が1つもなく小説のように読める。
革命前に日本に来て大阪外語大学の先生になった天才言語学者ネフスキイは西夏文字の原典のあるソ連に帰るがスパイの罪で銃殺された。
共産党員で演劇人の杉本良吉は寅さん映画にも出た岡田嘉子と共に左翼弾圧の日本から憧れのソ連に亡命するがこれも銃殺された。
フィローノフはナチス封鎖下飢餓のレニングラードでソ連当局の援助を拒否して餓死した。
スターリン政府の民衆弾圧は銃殺の数字を64有る地方政府に1000〜5000人、1つの刑務所は10000人のノルマとして与えるというものだ。
達成しないと責任者は殺されるから無実の者を拷問して嘘の罪と協力者を自白させる。
そして、その責任者もノルマ達成後漸次銃殺されるという地獄ぶりであった。
『本書は徹底した実録が1つの交響曲あるいは一篇の物語を形づくっている。』と作者あとがきにあったがまさにその通り、鈴木、大推薦の一冊。


フィローノフ作 西と東 1912〜13年
表紙の作品の全体像です
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